緊急用務空域とは?ドローン専門家が解説します。

こんにちは、ドローン専門行政書士の川原辰也(かわはらたつや)です。

令和3年6月1日から新たに「緊急用務空域」が設定され

この緊急用務空域での、無人航空機(以下、「ドローン等」という。)の飛行が禁止されることとなりました。

既にある、空港周辺、150メートル以上の空域、人口集中地区の上空といった3つの禁止空域に加え、

新たに「緊急用務空域」が設定されることが決まっています。

一体どういうことなのか、詳しくみていきましょう。

この記事でわかること

  • 緊急用務空域とはなにかが分かる
  • 緊急用務空域が設定される理由が分かる
  • ドローンユーザーへの影響は何かが分かる
  • 緊急用務空域が指定される具体例が分かる

緊急用務空域とは?

緊急用務空域とは、消防・救助・警察業務・その他の緊急用務を行う航空機が飛行する空域をいいます。

新たに追加される4つ目の禁止空域となります。

緊急用務空域を簡単に言うなら、

災害時にはその周辺でドローンを飛行してはいけませんという内容でしかありません。

おさらい:現在の飛行禁止空域

現在、飛行禁止空域とされているのは下記の3つです。

3つの飛行禁止空域

  • 空港周辺
  • 150m以上の空域
  • 人口集中地区の上空

3つの飛行空域についてさらに理解するには、下記をご覧ください。

緊急用務空域が設定された理由を、次に説明しています。

この理由を知れば、どのような空域なのかなんとなくでも理解ができると思います。

緊急用務空域が新たに設定された理由

令和3年2月に林野火災の消防活動中に、無人航空機の飛行が目撃され消防防災ヘリの活動が一時中断されたという事案が起こりました。

このような消防、救助等や警察業務といった緊急用務を行う航空機の安全を確保するために設けられました。

ドローンユーザーに課される新たな義務

無人航空機を飛行させるユーザーは、その飛行場所が緊急用務空域に当たらないか、飛行前に確認する義務を負うこととなりました。

そして、指定された緊急用務空域での飛行は禁止されることとなります。

現在(5月6日付け)でも、

注意喚起 再掲示

「災害等の発生している地域では捜索、救難、消火活動の有人機が飛行している場合があります。有人機の災害活動の妨げにならないよう、当該地域でのドローンの飛行は控えるなど、ご注意ください。」

と注意喚起がなされています。

ドローンユーザーは、また禁止空域が増えることによってドローンの飛行規制が強まると感じる方も多いと思います。

しかし、今まで通りしっかりとドローンに関する飛行ルール(法律)を守っているドローンユーザーからすれば、特別な規制ではありません。

凧あげ・花火を行う場合は?

緊急用務空域の指定は、ドローン等の飛行だけに影響を及ぼすものではありません。

催し事での花火や、凧揚げを、緊急用務空域に指定された空域で行う場合、許可又は通報が必要となりました。

緊急用務空域は変動する

このような緊急用務空域の趣旨からすれば、

緊急用務空域は変動するものであると予測できます。

例えば、●●県●●市の山林部分で火災が起こった。

その場合、●●県●●市の山林周辺の上空が緊急用務空域に指定される運用と考えられます。

したがって、現在の3つの禁止空域(空港周辺、150m以上の空域、人口集中地区)のように常に固定される禁止空域ではないと考えています。

まとめ:緊急用務空域ではドローン飛行禁止

繰り返しになりますが、この改正は突発的に山林火災が起こった場合など、いわゆる野次馬ドローン等の救助活動に影響を及ぼす一般人のドローン飛行を禁止するルールです。

緊急用務空域の設定は随時行われるので、ドローンの飛行前には国土交通省のHPから

当該飛行場所が緊急用務空域に指定されていないか確認していきましょう。

以下では、新しく省令(法律のルール)として追加予定の内容です。

2.改正の概要

⑴無人航空機の飛行の禁止空域の追加(規則第236条関係)国土交通大臣が、消防、救助、警察業務その他の緊急用務を行うための航空機が飛行する空域(以下「緊急用務空域」という。)を、無人航空機の飛行の禁止空域として指定できることとする。また、国土交通大臣は、当該空域の指定を行った場合は、インターネットの利用その他の適切な方法により公示しなければならないこととする。

⑵無人航空機を飛行させる者の飛行前確認事項の追加(規則第236条の4関係)無人航空機を飛行させる者が飛行前に確認しなければならない事項として、無人航空機を飛行させる空域が航空法第132条の飛行の禁止空域でないことを追加する。

⑶凧揚げ、花火等を行う際に許可又は通報が必要な空域の追加(規則第239条の2及び第239条の3関係)緊急用務空域として国土交通大臣が指定する空域を、凧揚げ、花火等を行う際に許可又は通報が必要な空域に追加することとする。また、国土交通大臣は、当該空域の指定を行った場合は、インターネットの利用その他の適切な方法により公示しなければならないこととする。

出典:国土交通省航空局 安全部 運行安全課より
参照:2021/5/10
引用おわり

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000215948

おまけ:ドローン行政書士の考察

緊急用務空域が現在の3つの禁止空域(空港周辺、150m以上の空域、人口集中地区)のように常に固定される禁止空域ではないと、予測している私の法的根拠を示しておきます。

さらに深い知識が欲しい方だけ読んでください。

予測の法的根拠

  • 規則236条に追加される予定の緊急用務空域に関する文言に「指定できる」と記載されている。これは既に禁止空域とされている規則236条第1項第1号~4号との文言とは異なります。
  • 禁止空域が追加的に記載された背景や趣旨

まず、「指定できる」という法律の文言上、空港周辺や人口集中地区などのように予め禁止空域が設定されているわけではありません。「指定」は、本来禁止空域ではなかった空域を禁止空域として新たに設定するという意味を含むからです。

法律はルール設定をする際に自ら目的を掲げます。そして、その自ら掲げた目的を超えて規制することは基本的にできません。目的を超えて規制する場合、過剰規制といわれて法律の効力が争われてしまうからです。

このことを今回の緊急用務空域についてあてはめて考えてみましょう。緊急用務空域というルールが設定された背景には、災害救援活動を妨げたという事実があります。救助ヘリといった航空機での災害救援活動を妨げられないという目的を達成すれば事足ります。

そのため、法律として災害救援活動を妨げる行為のみを規制すれば、目的を達成できます。災害救援活動が終わってもその空域を禁止空域として維持する理由は、目的達成により消滅するのです。そうであれば、一旦行った緊急用務空域の指定を解除するということは十分に考えられる運用といえます。

以上のように、「指定できる」という文言が含まれていることや、緊急用務空域というルール設定の目的や背景を鑑みれば、禁止空域を固定するものではなく、災害時にはその周辺でドローンを飛行してはいけませんといった内容だと予測しました。

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